『マージン・コール』のモデルは?実話との関係とリーマンショック
映画『マージン・コール』は、金融危機が表に出る直前の大手投資銀行の24時間を描いた作品で、舞台の銀行はリーマン・ブラザーズがモデルといわれています。自社の資産の危うさに気づいた社員たちと、経営陣が選んだ「売り切る」決断を追います。その後に市場で起きたことも確かめます。
目次
どんな作品か
2011年の米国映画で、J・C・チャンダーの長編初監督作品です。同年1月のサンダンス映画祭で初上映され、米国では10月21日に公開されました。日本では劇場公開されず、2012年2月3日にDVDで発売されています。
出演はケヴィン・スペイシー、ジェレミー・アイアンズ、ポール・ベタニー、ザカリー・クイントなど。舞台の投資銀行は実名では出てきませんが、リーマン・ブラザーズがモデルといわれています。
作品が描く場面
物語は、若手のリスク分析担当ピーター・サリヴァン(ザカリー・クイント)が、会社の保有する住宅ローン担保証券に潜む損失の大きさに気づくところから始まります。値下がりが続けば、会社の体力を超える損失になりかねない、という計算です。
知らせは夜のうちに上へ上へと伝わり、最高経営責任者ジョン・タルド(ジェレミー・アイアンズ)が加わる会議へ行き着きます。そこで選ばれるのは、市場がその危うさに気づく前に、問題の資産を売り切るという道です。
「売り切る」が相場に意味すること
市場には、その瞬間に並んでいる注文の量に限りがあります。一つの主体が大量の資産を一度に売ろうとすると、買い手のつく値段まで価格を下げていくしかありません。作中の決断は、その下落を自分たちが先に済ませ、損失を相手側に移すという意味を持ちます。
実際の金融危機でも、損失を抱えた金融機関が資産を売り、その売りがさらに価格を下げる、という連鎖が起きました。やがて危機は2008年9月のリーマン・ブラザーズの経営破綻として表に出て、為替では円が急騰しています。
このサイトの1分足では、ユーロ円は破綻が伝わる前の金曜の終値153.42円から、週明けは151.38円で始まりました。売りたい人に対して買い手のつく値段が、週末の間に2円ほど下へ移っていたことになります。
題名の「マージン・コール」とは
マージン・コールは、損失が膨らんで預けている証拠金が足りなくなったときに、取引相手から追加の証拠金を求められることです。日本のFXでは「追証(おいしょう)」とも呼ばれます。応じられなければ、ポジションは強制的に決済されます。
作品の中の投資銀行は、自分たちが抱える資産の値下がりが続けば、まさにこの状態に追い込まれかねないと気づきます。題名は、その一晩の緊張をひと言で表したものです。
小さな予算で作られた作品
製作費は約350万ドルと、ハリウッド映画としては小規模な作品です。出演者でもあるザカリー・クイントが、自らの製作会社を通じてプロデューサーに名を連ねています。
舞台はほとんどが投資銀行のオフィスの中で、派手な場面はありません。それでも第84回アカデミー賞では、J・C・チャンダーが脚本賞にノミネートされました。
出演者はほかに、ペン・バッジリー、サイモン・ベイカー、デミ・ムーア、スタンリー・トゥッチなど。スタンリー・トゥッチは、物語の冒頭で会社を去ることになるリスク管理部門の責任者エリック・デールを演じています。
作品とあわせて見るときのポイント
作品が描くのは、市場が気づく「前」の一晩です。リーマンショックの値動きは、市場が気づいた「後」のことで、作品の続きにあたる場面だといえます。
破綻が伝わったのは日本時間の週末だったため、チャートでは月曜の取引開始の瞬間に値が飛ぶ「ギャップ」として現れます。
出典
「このサイトの1分足では」と書いた値は、このサイトのデータから読んだものです。